(令和8年4月22日 知財高裁令和7年(行ケ)第10115号 「AIアナウンサー」事件)
事案の概要
原告(審判被請求人・商標権者)が有する本件商標「AIアナウンサー」(標準文字 登録第6152270号 平成30年4月19日出願、平成31年4月22日査定、令和元年6月14日設定登録)、35類他を指定役務とする商標権の登録について、被告(審判請求人)は、本件指定役務一部の役務について、商標法3条1項3号及び4条1項16号並びに同項7号に該当すると主張して、無効審判(2024-890029)の請求をした処、特許庁は、請求指定役務中、42類「全指定役務」(電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守、電子計算機用プログラムの提供)については、商標法3条1項3号及び4条1項16号該当を理由として登録を無効としその余の指定役務について審判請求は成り立たないとの一部成立審決をしたため、原告は、知財高裁に対し、審決の取消しを求めて提訴した事案である。
判 旨
本願商標は「AIアナウンサー」を標準文字で表してなる商標であるところ、その構成上、「AI」と「アナウンサー」を組み合わせたものと容易に看取できる。そして、証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば、「AI」は人工知能(artificial intelligence)を意味する語、「アナウンサー」はラジオやテレビでニュースを読んだり、司会・実況放送などをしたりする人や、劇場・競技場・駅頭などで、マイクで放送する人を意味する語として、本件査定日当時、無効対象指定役務の取引者、需要者の間において広く理解されていたと認めることができる。・・・これらの事実によれば、本件査定日当時、①ニュース原稿等を人間のアナウンサ-に代わって読み上げることのできるプログラムが複数開発され、実際のニュース番組等で使用されていたこと、②これらのプログラムは、これまで人間のアナウンサーによって行われていたアナウンスをAIが代わりに行うことから「AIアナウンサー」と称されたことが認められる。そうすると、本件査定日当時、本件商標「AIアナウンサー」が、無効対象指定役務である電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守、電子計算機用プログラムの提供に係る業務に使用された場合、取引者、需要者は、AI(人工知能)を用いてニュース原稿の読み上げを行うシステム(プログラム)の設計や提供、保守に係る役務、すなわち役務の質を指すものと認識したと認めることができる。加えて、本件商標は、「AIアナウンサー」を標準文字で表してなり、格別の識別力を付加する要素はないから、役務の質を「普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に当たる。したがって、本件商標は、本件査定日において、無効対象指定役務につき、役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、また「AIアナウンサー」業務とは関連しない役務については、役務の質についての誤認を生じさせるおそれがあると認められるため、法3条1項3号及び4条1項16号に該当する。
コメント
本件事案は、本件登録商標「AIアナウンサー」指定役務「電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守、電子計算機用プログラムの提供」に対する無効審判一部成立審決が、知財高裁でも支持された事例である。現に、査定日前に、放送局で、ニュース原稿等を人間のアナウンサ-に代わって読み上げることができるプログラムが複数開発されニュース番組等で使用されていたことが数例認定されている。時代の趨勢で、役務の質(内容)表示及び質誤認の虞の認定、判断は妥当である。
