2026-06-01

工藤莞司の注目裁判:結合商標について要部観察が許されるとして類似商標と判断された事例

(令和8年4月13日 知財高裁令和7年(行ケ)第10111号 「SORA」事件)

事案の概要
 原告(審判請求人・出願人)は、本願商標(下傾図左参照)について、拒絶査定を受けたことから拒絶査定不服審判(2024-18100)の請求をし、44類「マッサージが組み込まれた顔及び体の手入れ、マッサージが組み込まれた美容のための体の手入れ」に補正したが、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対し審決の取消しを求めて提訴した事案である。拒絶理由は商標法4条1項11号該当で、引用商標は登録第5728340号商標(下掲図右参照)、指定役務44類「美容、理容」である。

判 旨
 ア 本願商標は、黒色の横長長方形を背景とし、その中央部に、いずれも白色の円弧、複数の曲線を組み合わせた図形と、白色で横書きした「SORA」の欧文字を上下に配して成る結合商標であるところ、・・・そうすると、本願商標の構成中、「SORA」の文字部分については、その称呼、観念等に加え、構成態様からも、需要者である一般の利用者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる一方、その構成中の図形部分については、背景部分を含め役務の出所識別標識としての称呼、観念は生じないというべきである。イ 引用商標は、左側に、黒色と淡灰色の縦線模様を施し、その右下側部分を斜めに切り欠いた矩形状の図形を配し、右側に、黒色で横書きした「SORA」の欧文字を配して成る結合商標であるところ、・・・そうすると、引用商標の構成中、「SORA」の文字部分については、その称呼、観念等に加え、構成態様からも、需要者である一般の利用者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる一方、その構成中の図形部分については、役務の出所識別標識としての称呼、観念は生じないというべきである。ウ 上記ア及びイを踏まえると、本願商標及び引用商標は、実際の取引において、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可欠に結合しているものとは認められず、各構成中、「SORA」の文字部分をそれぞれ要部と抽出し、その部分のみを比較して、商標の類否を判断することが許されるというべきである。そこで、本願商標と引用商標を対比すると、本願商標の要部である「SORA」の文字部分と、引用商標の要部である「SORA」の文字部分は、外観において、文字の色や書体が相違するとはいえ、いずれも欧文字を横書きにして成るもので近似し、称呼において同一であり、観念においても比較し得ないか又は同一であって、その外観、称呼、観念等によって需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すると、両商標は、これが同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に、その商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるといえ、したがって、本願商標と引用商標は互いに類似するものと認めるのが相当である。
 引用指定役務中の「美容」は、容貌、容姿、髪型を美しくするための「美容ケア」に関連する役務を広く含むものであり、いずれも人に提供する美容ケアに関連するサービスである本願指定役務は、これに含まれると解するのが相当である。以上のとおり、本願商標は、引用商標と類似する商標であり、引用指定役務 と同一又は類似する役務について使用するものであるから、商標法4条1項11号に該当する。

コメント
 本件事案は、結合商標同士において要部観察の是非が争点で、知財高裁はこれを認めて、要部において類似すると判断して、審決を支持したものである。すなわち、共に「SORA」が支配的な部分との認定、判断を前提としたもので、正当である。原告は、指定役務の類否も争ったが本願に係る個別の役務は、引用に係る上位概念の役務に含むとされた。