欧州連合知的財産庁(EUIPO)は、6月23日に「知的財産権を侵害する海賊版サイトやアプリにおけるオンライン広告」に関する調査報告書を公開した。同様の調査は2019年より毎年実施されており、海賊版サイトが「合法的なオンライン広告」を最大の収益源にしている現状を把握し、その対策の効果を検証するためのもので、1.侵害者の資金源を断つこと、2.消費者の誤認・リスクの防止、3.「オンライン広告と知的財産権に関する覚書(MoU)」の効果検証を目的としている。
本調査は、EU加盟18カ国と英国、米国を加えた計20カ国を対象として実施されたもので、5,671のウェブサイトと337のモバイルアプリケーションが分析された。これらのうち、ウェブサイトの37%、アプリの57%が「違法」に分類され、残りは「権利侵害が確認されているものの、現時点で法的判断がまだ下されていないもの」に分類されている。
1.主な調査結果
1-1.大手ブランド広告の急増
海賊版サイトにおける「大手ブランド」の広告シェアが前年比で80%急増した。2024年のシェアは20%であったが、2025年には全体の36%へと拡大している。
1-2.企業広告の支配的状況
監視対象となったウェブサイトにおける広告表示回数の66%、モバイルアプリにおける広告表示回数の96%を一般の「企業ブランド」による広告が占めており、そのうち、大手ブランドの割合はウェブサイトで36%、アプリで16%に上る。
1-3.広告の表示規模
2025年1月〜11月のデータによると、海賊版ウェブサイトで127億回、アプリで34億回の広告表示が記録された。
2. 背景にある要因と課題
過去の報告では、規制強化やシステムのブロックによって低品質な詐欺的広告が減少した結果、相対的に大手ブランドの割合が増えた可能性が示唆されていた。しかし、2025年のデータでは、大手ブランドのシェアが大きく上昇する一方で、海賊版サイト側の広告収益の減少ペースが緩やかになっており、違法プラットフォームを意図せず支えてしまっている現状が浮き彫りになった。また、権利侵害サイトへの広告掲載を制限するための「侵害監視リスト(IWLs:Infringing Watch Lists)」の効果が低下している可能性を示唆している。
※ 本調査における「大手ブランド」とは、単に知名度が高いという主観的なものではなく、「グローバルまたは特定の国・地域において、広く認知され、確立された市場シェアを持つ、信頼性の高い合法的企業(レピュタブル・ブランド)」を指している。
本調査に関するEUIPOの記事は こちら
