2026-07-27

工藤莞司の注目裁判:商標権の侵害訴訟が認容されて差止請求及び損害賠償請求が認められた事例

(令和8年5月28日 大阪地裁令和6年(ワ)第12150号 「喜び」商標権侵害事件)

事案の概要
 原告は、本件商標1「よろこび(縦書き)」(第889339号)、同2「よろこび」(第4938994号)、同3「よろこび/喜」(第5095211号)で、指定商品日本酒に係る各商標権を有している。被告喜代村は、飲食店の経営、酒類の販売等を目的とする株式会社で、令和7年4月時点で、東京都を中心に、全国的に46店舗の被告すし店を運営している。被告高橋酒造店は、秋田県に酒蔵を置く、酒類醸造販売業を目的とする株式会社である。被告高橋酒造店は、平成16年11月頃から令和6年9月まで、被告喜代村から依頼を受けて、被告喜代村における専売品として被告製品を製造し、酒屋を介して被告喜代村に納入した。納入に係る被告製品は、いずれも瓶詰めされており、その瓶には、被告標章1「喜び(縦書き)」又は2「喜び(縦書き)」を含む商品ラベルが付されていた。被告喜代村は、被告高橋酒造店から、酒屋を介して被告製品の納入を受け、 被告すし店において、メニューに「喜び(小)」「喜び(300ml)」と記載して被告標章3「喜び」を付して、来店客に被告製品を提供していた。本件サイトには、少なくとも令和6年8月19日の時点で、上記メニューのほか、被告標章1又は2を含む商品ラベルが付された瓶詰めの被告製品(容量3種類)の写真が、「すしざんまいオリジナル特別純米『喜び』」との文字とともに掲載されていた。前掲事案において、原告が商標権侵害として、被告等に対し使用の差止め及び損害賠償を請求したものである。

判 旨
 本件各商標と被告各標章の類否 本件商標1と被告標章1及び2は、平仮名で統一されているかどうかという点で、外観には一定の差異があるものの、取引者や需要者にとっては、「よろこび」の漢字による表記が「喜び」であることは常識に属することであって、共通するものというべきである上、観念及び称呼は共通する。この点、被告すし店のメニュー表には「喜び」のほかに「代」との日本酒(冷酒)が掲載されており(証拠略)、これとの対比において、被告製品が、被告喜代村の「喜」に由来するものと連想する可能性がないとはまでいえないが、そのような連想が取引上常に想定されるとはいえず、本件商標1と観念が共通することが左右されるものではない。そして、「よろこび」ないし「喜(よろこび)」との表現を日本酒(指定商品)の商品名とすることがありふれているとも評価できず、需要者にとって、 通常の識別力を有することに疑いはない。また、初光酒造は和歌山県の酒蔵であるが、原告製品は、初光酒造のウェブサイト上で販売されており全国で購入できること、被告製品が提供される被告すし店は東京を中心に全国的に展開されていることからすると、出所の誤認混同が生じることも明らかである。以上のことからすると、本件商標1と被告標章1及び2とが日本酒に使用された場合には、その出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるから、被告標章1及び2は、本件商標1と類似する。・・・被告標章3は本件商標1と類似すると認められる。・・・被告各標章は本件商標2と類似するものと認められる。・・・被告各標章は本件商標3と類似する。以上のとおり、被告各標章は本件各商標といずれも類似し、被告喜代村に先使用権は認められず、原告の本訴請求が権利濫用に当たるとも認められない。したがって、被告らによる、日本酒(被告製品)に「喜び」の標章並びに被告標章1及び2を付し、又は同各標章を付した日本酒(被告製品)を製造販売等することなどの被告各標章の使用行為は、原告の本件各商標権を侵害する。商標法38条3項により算定される原告の損害額は3127万8308円(15億6391万5397円×0.02)と認められる。

コメント
 本件は、商標権訴訟において、原告の請求が認容されて被告の使用が差し止められ、損害賠償も認められた事案である。損害賠償額は約3000万円と高額が認定されている。約20年間の侵害行為が継続したものである。被告の一人は全国展開している業者であり、登録商標に対しての認識や注意力が足りないと思われ、残念である。事前に調べれば、回避は出来たであろう。