韓国で2026年6月23日付議員立法で発議された商標法、デザイン保護法、特許法改正案は、懲罰的損害賠償の適用要件を備えている場合、原則的に5倍を懲罰的損害賠償額として定め、その後諸般の事情に鑑みて減軽するいわゆる事後的減軽システムを適用することを骨子としており、今後の立法の推移が注目される。
懲罰的損害賠償制度は特許法で2019年7月9日から初めて施行され、その後商標法とデザイン保護法にも導入されて2020年10月20日から施行され、損害額の3倍までを損害賠償額として算定することができるように規定した。施行後ほどない2024年8月21日(特許法)および2025年7月22日(商標法・デザイン保護法)から従来の“3倍まで”が“5倍まで”に大幅に引き上げられ現在施行中である。このようななか、原則的に懲罰的損害賠償額を5倍とし、諸般の事情を鑑みて減軽する方式の改正案が国会に提出されたという点で、懲罰的損害賠償の改正推移と現在までの適用事例に注目する必要がある。
実損害賠償制度にのみ慣れ親しんでいる法院は、一般の損害賠償制度とほぼ同様に懲罰的損害賠償制度を運用し、懲罰的損害賠償制度が不法行為に対する予防的機能を十分に果たしていないという点が今回の改正案立法の背景であり、韓国での事業・営業活動の際には他人の知財権に抵触してしまうことがないよう慎重な事前調査と紛争発生時の適切な初期対応がより重要になってくるといえる。
なお、懲罰的損害賠償制度の施行以降、商標権やデザイン権侵害を理由に賠償が認められた事例をみると、登録商標が先登録商標によって無効とされたあと、無効確定日からは故意的侵害があったとみて2倍の懲罰的損害賠償額を含む合計6億ウォンを認めた菓子ブランド事件(2024年9月言渡)、デザイン権侵害と関連して損害額1億ウォンの3倍である3億ウォンを認めた収納ボックス事件(2024年11月言渡)、商標権者から警告を受ける前であっても、商標権に対する不使用取消審判を請求した日からは故意性があったとみて1.5倍を認めた歯科医院事件(2025年8月言渡)、自身の商標権を他人に移転したにもかかわらず商標を使用し続けて侵害した者に3倍を、その者から侵害品の供給を受け販売した流通業者には警告を受けた日から2倍を認めた事例(2025年9月言渡)、自身の登録商標と類似の商標を不正使用の故意をもって使用し他人の登録商標と誤認・混同を生じさせた場合に、警告を受けた日からは故意性があるとして2倍を認めた歯磨き粉ブランド事件(2026年1月言渡)等がある。今後も懲罰的損害賠償判決は増え続けていくものと予想される。
