2026-08-10

工藤莞司の注目裁判:「家庭用鼻水吸引器」を指定した「HANASUI」が商標法3条1項3号に該当するとされた事例

(令和8年6月16日 知財高裁令和7年(行ケ)第10118号 「HANASUI」事件)

事案の概要 
 原告(審判請求人・出願人)は、指定商品を10類 「家庭用鼻水吸引器」(補正後のもの)とした本願商標「HANASUI」について登録出願をしたが、拒絶査定を受けて、拒絶査定不服審判(2024-4080)を請求した処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対して、審決の取消しを求めて、本訴を提起した事案である。拒絶理由は、本願商標は、単に商品の品質及び用途を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標で商標法3条1項3号に該当し、3条2項の要件を具備するとはいえないとした。

判 旨
 本願商標は、外観上一体のものとして把握され、「ハナスイ」の一連の称呼が生じるものと認められるところ、前記のとおりの本願商標の指定商品等についての取引の実情を踏まえれば、本願商標をそ の指定商品である「家庭用鼻水吸引器」に使用するときは、それに接する 需要者、取引者において、「鼻吸い」(鼻水を吸うこと)の表音をローマ字表記したものと認識されるものということができる。そして、「鼻吸い」が鼻水を吸うという処置を意味する語として、広く使用されていることや、自宅において鼻水を吸う処置に用いる器具は、「鼻水吸引器」と称されるほか、「鼻吸い器」とも称され、一般に広く流通しており、「鼻吸い」は当該器具の略称としても用いられる語であることからすれば、本願商標は、その指定商品との関係で商品の品質又は用途(「鼻吸い」に用いられる器具であること)を表示記述するものとして取引に際し必要 適切な表示であり、本願商標が指定商品である「家庭用鼻水吸引器」に使用された場合に、需要者、取引者によって当該商品の品質又は用途を表示したものであると一般に認識されるものであると認められる。したがって、本願商標は、その指定商品との関係において、商品の品質又は用途を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから、商標法3条1項3号に該当する。
 本願商標が使用により自他商品識別力を獲得するに至ったとはいえないから、本願商標の商標法3条2項該当性を否定した本件審決の判断に誤りはない。

コメント
 本件事案においては、本願商標が商標法3条1項3号に該当するとした審決が支持された事例で、3条2項該当も否定されている。指定商品が「家庭用鼻水吸引器」で、本願商標が「HANASUI」であり、鼻吸いをローマ字表記したに過ぎないものであるから、指定商品の品質、用途を表示することは明らかで、ローマ字表示も取引実情の範囲内である。