(令和8年6月10日 知財高裁令和7年(行ケ)第10120号 「子供用フォーク立体商標」事件)

事案の概要
原告(審判請求人・出願人)は、指定商品8類「乳児用及び子供用の食卓用フォーク」(補正後)とする本願商標(立体商標右図参照一部略)について登録出願をしたところ、拒絶査定を受けて拒絶査定不服審判(2023-10435)の請求をした処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対し、審決の取消しを求めて提訴した事案である。争点は、審決の商標法3条1項3号該当性及び同条2項所定の要件の具備に係る各判断の当否である。
判 旨
本願商標は、 ① 全体的に厚みのある太い柄で、② フォークヘッドと柄との接続箇所から少し離れた箇所で、正面及び側面から見て狭くなったくびれ部分を有し、 ③ くびれ部分から後端までの柄は、その腹側が緩やかに膨らみ、その背側がやや大きく膨らんだ形状であり、④ フォークヘッドの歯は4本であり、各歯の内側にU字状の凹みが形成されている立体的形状からなるものである。上記の事情を総合考慮すると、本願商標の立体的形状は、需要者において、当該形状が、商品に必要とされる機能に資することを目的として選択されたものと把握し得る範囲のものであると認められ、したがって、本願商標は、商品の形状その他の特徴を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものとして、商標法3条1項3号に該当するというべきである。
本件商品の具体的な販売数量や市場占有率はなお明らかでなく、その広告宣伝の期間、規模も限定的なものにとどまること、そして、本件アンケート調査の結果によっても、本件商品の写真のみから、原告のブランド名等を回答した者は20.1%にとどまり、その余の調査対象者は、他社のブランド名等を回答したり、「全くわからない」と回答したりし、本件商品の写真のみからは「全くわからない」と回答した者に対し、原告を含む10社のブランド名等を示した場合においても、原告のブランド名等を回答した者は4.6%であるのに対し、「わからない」と回答した者はなお44.1%に上るというのであって、本件商品の形状は、当該商品に必要とされる機能に資することを目的として選択されたもので、それ自体、強い自他商品の識別力を有するものではないことをも総合考慮すると、本願商標は、使用された結果、需要者において、自他商品の識別力を有するに至ったとまで認めるのは困難というほかなく、したがって、本願商標は商標法3条2項所定の要件を具備するものではないというべきである。
コメント
指定商品子ども用フォークに係る立体商標について、知財高裁も識別力を否定し、また使用による識別力の獲得にも至っていないとして、審決を支持したものである、原告のアンケートの結果も芳しくない。商品自体の形状に係る立体商標は、商品の性質上識別力の具有は困難である。使用による識別力の獲得が問題とされるが、この立証も簡単ではない。需要者のアンケート結果が重要視されるが、本件事案ではこの結果も届かないとされている。さらに使用を継続して、再チャレンジも在り得るだろう。このような先例として、ヤクルト容器立体商標事件がある(平成22年11月16日 知財高裁平成22年(行ケ)第10169号)。
