2026-08-18

EU:商標審査ガイドライン改訂の主なポイント、7月1日施行 - EUIPO

欧州連合知的財産庁(EUIPO)は、2026年7月1日より「欧州連合商標(EUTM)および欧州連合意匠(EUD)審査ガイドライン2026年版」を施行した。法改正を伴うものはないが、審理・審査の実務基準が更新されており、出願および異議申立手続き等において注意すべき変更が行われている。商標審査における主な変更点は以下の通り;

1. 地理的表示(GI)に関する職権審査の拡張絶対的拒絶理由(EUTMR第7条(1)(j)等)に基づく地理的表示の職権審査の範囲が拡大・明確化された。従来の同一・類似商品等を超えた範囲でも職権で拒絶できることが明示されている。EUIPOが保有する情報だけでなく、第三者からの意見や情報も根拠になり得るため、関連するサービスや周辺商品にまで審査対象が広げられる。GIと紛らわしい商標出願に対する監視・審査がより厳格化される。

2. 異議申立手続きの効率化
* EUTMR第8条(4)に基づく先行権利が同条の要件を満たさない場合、従来は「証拠不十分(unsubstantiated)」と扱われていたが、2026年版では、これを不適法・不受理(inadmissible:受理要件を満たしていない)として扱う新しい実務が示された。その結果、実体審理を進めることなく、より早い段階で手続を終了できることになる。
* 期限延長申請の簡素化:2回目以降の期限延長申請について、従来は裏付け証拠(supporting evidence)の提出が必要とされていたが、2026年版では、2回目以降の延長申請について、裏付け証拠を提出義務がなくなった(ただし、例外的な事情を記した合理的理由の記載は引き続き必要)。
* 合意による手続き停止の自動化:共同で手続停止を求めた場合の初回6か月の手続き停止後、さらに共同で延長を求めると、原則として18か月間の延長が自動的に認められるという新しい実務が示された。(最大2年間)

3. 文字標章における同一性・類似性判断の明確化2つの文字商標を比較する際、大文字・小文字の表記差(例:「ORION」「Orion」「orion」)は商標比較に影響を与えず、同一の文字標章として扱われる点がより明確に整理された。また、装飾のない単一文字又は僅かしか図案化されていない単一文字についての識別性は原則として本来的識別力が弱いものと扱うことが明記された。

4. 不使用取消手続における商標の「真正な使用(genuine use)」の立証に関する実務を明確化した。商標権者は、取消申請日前5年間における使用について、「時期、場所、範囲、性質」を示す客観的証拠を提出する必要がある。新ガイドラインでは、証拠を個別に評価するのではなく、請求書、カタログ、広告、ウェブサイト等を相互に関連付け、全体として評価することを明確にした。また、広い商品・役務区分について使用が一部しか立証されない場合、使用が認められる適切なサブカテゴリーを画定する考え方も整理された。これにより、単に商標の使用事実を示すだけでなく、どの商品・役務について、どの程度の使用が立証されたかがより重要となる。