英国のプロサッカークラブチェルシーFCのロゴ(下図右)とロンドン地下鉄(London Underground)の円形ロゴ(下図左)は、いずれも極めて著名な商標であり、その高い知名度は、多種多様な商品にそのロゴが採用・展開されている点にも表れている。

チェルシーFCのロゴは、Tシャツ、マフラーその他の商品に使用されている一方、ロンドン地下鉄のロゴは、ロンドンの街並みを象徴する視覚的要素として広く認識されているだけでなく、さまざまな商品にも使用されている。
当然のことながら、これらの商標権者は、そのような商品全般について自らのロゴを保護したいと考えている。しかし、商品と商標保護の間には、ある課題が存在する。それは、「商品」という包括的な用語で商標登録を受けることはできず、保護を求める個々の商品を指定して商標登録しなければならないという点だ。もっとも、商標出願の時点で、将来的にどのような分野が商品展開の対象となるかを正確に予測できないことも少なくない。そのため、商標権者は一般に、広い範囲で商品・役務区分を選択し、多数の商品や役務を指定して出願する傾向がある。
チェルシーFCのロゴおよびロンドン地下鉄のロゴに関して欧州連合知的財産庁(EUIPO)が下した最近の2つの決定は、このような広範な商標登録が、かえって商標権者に不利に働く場合があることを示している。
2つの事件において、登録商標はいずれも不使用を理由として一部取消しの対象となった。チェルシーFCについては、衣類、バッグ、マグカップ、ポスター、玩具、サッカーボールなど、典型的なファン向け商品の範囲では保護が維持されたが、金融サービス、宿泊・ホスピタリティ・サービス、小売サービスを含むその他多くの商品・役務については、提出された使用証拠が不十分であると判断された。
一方、ロンドン地下鉄の親会社のロンドン交通局(Transport for London)は、その円形ロゴについて、地下鉄による鉄道輸送及びこれに関する情報の提供についてのみ権利を維持する結果となった。そのため、印刷物、衣類、玩具、ホスピタリティ・サービスに至るまでの広範な商品・役務については、保護は失われる結果となった。
したがって、広範な指定商品・役務について商標登録を受けた場合には、それらすべての商品・役務について実際の使用を裏付ける証拠を備えていることが求められる。そのような証拠を提出できない場合、その登録は不使用取消しに対して脆弱なものとなってしまう。
このことから、新たなロゴについては、意匠法による保護も併せて検討することが賢明だろう。意匠登録は、ロゴやグラフィックデザインの外観を保護するものであり、商標法とは異なり使用要件がない。もちろん、意匠権は商標権に代わるものではないが、有効な補完的保護手段とはなり得る。
ロンドン地下鉄の円形ロゴのように、長年使用され定着しているロゴについては、意匠法による保護は現実的ではないが、これから商品展開を図る新しいロゴであれば、意匠法による保護を検討する価値は十分にあると言えるだろう。
本文は こちら (What do Chelsea Football Club and the London Underground have in common?)
