エルメスは、エルメスの代表的なバッグを念頭に置いた「ユーモラスな表現」に対して断固たる対応を取った。模倣を試みる者に対して、ウィットやパロディは商標権侵害の免罪符にならないことを改めて示したものだとNiké Mionは解説する。
エルメスのバッグ、とりわけバーキンとケリーは、誰もが手にできるものではない。相当な投資を要するだけでなく、辛抱強く待たなければならないからだ。長い順番待ちリストが存在するため、確実に希望するバッグを購入できる保証もない。
小売業者Sherine Orientは、エルメスのバッグに似たバッグに、「En attendant mon Birkin(私のバーキンを待つ間)」と「Mon Hermès est à la maison(私のエルメスは家にある)」というスローガンを付して市場に投入することで、この需要を利用できると考えた。
これらの文言はユーモラスな表現として意図されたようだが、エルメスには不愉快に映った。高級バッグメーカーであるエルメスが異議を唱えたものの、Sherine Orientは販売を中止しなかった。その結果、Sherine Orientは高い代償を払うこととなった。
エルメスが訴訟を提起した理由
エルメスはSherine Orientを相手取りナンテール裁判所に訴訟を提起した。エルメスは、争点となったバッグの販売停止と在庫の廃棄を求めた。また、著作権と商標権の侵害とされる行為が商業面および信用・評判に及ぼした影響について損害賠償を請求した。
エルメスが根拠としたのは、当該バッグについて有する著作権、バーキンの錠前に関する立体商標権、ならびにスローガンにある「HERMÈS」と「BIRKIN」の文字商標権だ。
商標法上、商標権者は同一または類似する商品・役務について、同一または類似する標章が後に使用され、その結果として公衆に混同を生じさせるおそれがある場合、当該使用に異議を申し立てることができる。
当初、文字商標は侵害されていないと判断された理由
第一審裁判所は、著作権と立体商標に基づく請求を認容したが、文字商標に基づく請求は棄却した。
裁判所は、Sherine Orientが使用したスローガンは文章の一部にエルメスの商標が使用されていることから、標章の比較においては文章全体を考慮しなければならないとして、商標権侵害は成立しないとの判断を示した。さらに裁判所は、当該表現のユーモラスな性質にも言及し、需要者が問題のバッグをエルメス製であると信じるおそれは低いと判断した。裁判所によれば、Sherine Orientが使用した標章はエルメス商標と同一とは認められず、これらの文章の使用が混同のおそれを生じさせることもないとされた。
エルメスはスローガンに関する判断を不服として控訴した
エルメスは、Sherine Orientが使用したスローガンでは「Hermès」と「Birkin」の語が大文字表記されており、「En attendant mon Birkin」と「Mon Hermès est à la maison」の文中での使用であっても、登録商標への明示的な言及であり、当該商標は同一の商品について同一に使用されたもので商標権侵害を構成する、とエルメスは主張した。さらにエルメスは、侵害者が他の語句を加えるだけで容易に商標権侵害を免れることができるとすれば、商標法の実効性が損なわれると主張した。
判決:ユーモアであっても商標権侵害を免れられない
ヴェルサイユ控訴院は判決において、「BIRKIN」と「HERMÈS」商標が公衆に広く知られていることを指摘した。
バッグに付された文言は、需要者により、本物の「BIRKIN」バックおよび「HERMÈS」バッグへの直接的な言及として認識される。すなわち、需要者がまだ所有していない、又は自宅に置いてあるオリジナルのエルメスのバッグと、パロディバッグとを比較するものとして認識される。これにより、保護された商標と販売されたバッグとの間に直接の結び付きが生じる。これらのバッグは、当該商標が登録されている商品と同一であり、商標の使用は、これらのバッグの販売を促進することを意図している。
文章のユーモラスな表現により、バッグが実際にエルメス自身から提供されたものではないことにはほとんど疑いがないとしても、これらの行為は商標権者の利益を害すると共に、当該スローガンは著名ブランドの評判から利益を得ること、すなわちエルメスの評判から利益を得ること等を狙ったものとされた。
ヴェルサイユ控訴院は、バッグ上のユーモラスな文言における「HERMÈS」と「BIRKIN」の文字商標の使用は商標権侵害を構成すると判示した。これにより、第一審裁判所の判決は取り消された。
判決は商標権者と事業者にとって何を意味するか
商標は、主として出所表示機能および識別機能を有する。しかし、本判決は、商標が広告機能と投資機能も果たすことを示している。商標権者は、信用と評判を構築するために必要な、金銭的なものを含む努力を重ねてきている。問題となる商品が商標権者に由来しないことが明白であっても、第三者が当該著名商標の評判を不当に利用し、または損なうことは許されるべきではない。
本判決はまた、第三者のブランド名をウィットに富むメッセージの有無を問わずスローガンの形に組み込めば使用できると考える者にとって、重要な注意喚起となった。このような使用の評価は事案の事情に左右されるが、他人の登録商標の使用を検討する場合には、事前に専門家の助言を求めることが賢明だ。
本文は こちら (“Waiting for my Birkin”: Witty slogan or trademark infringement?)
