自家製パスタソースに最適なトマトは何だろうか。個人的には、イタリアのムッティ(Mutti)の缶詰トマト、特にサン・マルツァーノ・プラムトマト(San Marzano plum tomato:プラムのような楕円形のトマト)に勝るものを見つけるのは難しいと思う。サン・マルツァーノ・プラムトマトを弱火で十分時間をかけてじっくり煮込めば、素晴らしく甘みのあるソースが出来上がる。美味しい料理や調理法を扱うブログの書き出しとしてはふさわしいが、商標ブログの書き出しとしても適しているはずだ。
サン・マルツァーノ・プラムトマト(Pomodoro San Marzano dell’Agro Sarnese-Nocerino:アグロ・サルネーゼ・ノチェリーノ地域のサン・マルツァーノ・トマト)は、イタリアのカンパニア州産(州都:ナポリ)とし、欧州連合(EU)の原産地呼称保護(PDO:Protected Designation of Origin)によって保護されている。この品質表示は、農産物等の生産および加工が特定の地理的区域内で、認められたノウハウに従って行われていることを保証するもので、よく知られた例としては、フェタチーズ(Feta)、パルマハム(Prosciutto di Parma)、シャンパン(Champagne)などがある。
最近、ドイツ企業がトマトの図形を含む「SAN MARZANO No. 2」商標について、EUIPO(欧州連合知的財産庁)に登録出願した。この出願は、トマト製品やトマトソースだけでなく、衣料品、バッグ、アクセサリーも指定していた。
トマト製品については、この商標は記述的であるとして登録を拒絶された。EUIPOによれば、需要者は「SAN MARZANO(サン・マルツァーノ)」を有名なトマト品種を指すものとして理解し、「No. 2」をサイズまたは等級を示す表示として理解することになる。また、トマトの図形も識別力を十分に付加するものではない。筆者らの見解では、この図形は単に当該標識の記述的性質を強めるものにすぎない。したがって、この標識は主として包装の中身が何であるかを記述するものであり、これらの商品について商標として機能することはできないとされた。
一方、「SAN MARZANO」のPDOを管理する生産者団体は、バッグ、衣料品、履物など、残りの指定商品について異議を申し立てた。生産者団体によれば、保護されたサン・マルツァーノ・トマトとの関連性は明らかであり、ドイツ企業は当該PDOの名声から利益を得ることになると主張した。
実際、PDOによって与えられる保護は、そのPDOが保護する商品、すなわち本件ではトマトを超えて及ぶ可能性がある。そのためには、商標が比較可能な商品について使用されている場合、またはPDOの名声を不当に利用する場合のいずれかに該当する必要がある。
EUIPOによれば、本件で問題となった商品は比較可能なものではなかった。衣料品や革製品は、トマトとは大きくかけ離れた商品だからである。さらに、生産者団体は、当該PDOが名声を有していることを示す証拠を何ら提出しなかった。そのためEUIPOは、「PDOの名声に便乗する」という基準を適用する根拠はないと判断した。
したがって、異議申立ては退けられた。
「SAN MARZANO No. 2」商標は、トマト製品については、それらの商品について記述的であることを理由として登録が拒絶されたが、バッグ、衣料品、履物などについては、出願手続を進めることができる。
このように、原産地呼称保護は広範な保護を提供するものの、その名称を構成する要素にあらゆる商品に対する独占的権利を与えるものではない。
本文は こちら (The delicious San Marzano plum tomato at the heart of a trademark dispute)
