2026-09-02

EU:広告スローガンを商標登録するための課題 - Novagraaf

2026年7月1日、EU一般裁判所は、フィンランドの国営ギャンブル事業者ヴェイッカウス(Veikkaus Oy)によって登録出願された文字商標「FOR BETTER GAMING – VEIKKAUS」に関する判決を下した。この判決は、商標法における極めて周知の(しかし軽視されがちな)原則を改めて想起させる有用な事例となった。「強力なマーケティングメッセージであっても、そのまま商標登録できるわけではない」ということをNoé Himmelreichが解説する。

背景として、ヴェイッカウスは「FOR BETTER GAMING(より良いゲーミングのために) – VEIKKAUS」という文字商標について、ゲーム、ギャンブル、エンターテインメント、ソフトウェア、およびそれらに関連するサービス等を指定して商標登録出願を行った。欧州連合知的財産庁(EUIPO)は、出願商標はサービスの実質的な部分について十分な識別性を欠いていると判断し、登録を拒絶した。拒絶査定不服審判がこの決定を概ね維持した後、ヴェイッカウスはEU一般裁判所に上訴した。 

本件(事件番号 T-615/25)の根底にある中心的な争点は、当該商標が生来的に(「本質的に」)識別性を有しているか否かであった。ヴェイッカウス側は、需要者が「VEIKKAUS」という部分を自社(出所)への言及として認識するため、標章全体としても単なる宣伝メッセージにとどまらないと主張した。また、「Veikkaus」はフィンランド語で「ギャンブル」や「賭け」を意味し、本来は識別性を欠く語であるものの、同社の単独商標としては集中的な商業的使用を通じて識別性を獲得(使用による識別性の取得)しているとも主張した。 

EU一般裁判所はこのスローガンをどう評価したか?
判決理由において、EU一般裁判所は確立されたクラシックな原則から論を進めた。すなわち、商標は、需要者がサービスや商品の商業的出所を識別し、それを他の企業の商標と区別できるようにするものでなければならないという原則だ。商業的出所を表示するというこの機能が欠落している場合、商標は識別性を欠くことになり、EU商標規則(EUTMR)第7条(1)(b)の絶対的拒絶理由に基づく拒絶対象となる。

EU一般裁判所は、判断にあたり特に需要者のうちフィンランド語を話す層に焦点を当てた。EUIPOとEU一般裁判所によれば、英語とフィンランド語の双方に精通した需要者は、この組み合わせを「より良い偶然のゲーム/賭けのために」といった趣旨のメッセージとして解釈する。その結果、本件出願商標は商業的出所を示すものではなく、主として提供されるサービスの品質や目的に関する宣伝的・記述的なメッセージとして認識されると判断された。

EUにおける商標としてのスローガンに関する主要な論点
このEU一般裁判所判決は、欧州商標法が一般的なマーケティングメッセージに対して独占権を付与するものではないことを再確認するものとなった。スローガンは、単に肯定的なメッセージを伝える以上の機能を果たさなければならず、該当するサービスの商業的出所を需要者に認識させ得るものでなければならない。同じく重要な点として、使用によって識別性を獲得した標章を一般的なスローガンに付加したとしても、それによってスローガン全体に自動的に識別性が付与されるわけではないということだ。

この判決は、新しいブランドやスローガンを開発する企業にとって明確な教訓となる。単なる宣伝目的の広告スローガンのみを選択することは、商標として保護されないというリスクを伴う。したがって、EU内においてスローガンの実効性ある商標保護を実現するためには、識別性を踏まえた戦略が必要であり、場合によっては長期にわたる使用の実績を示す強力な証拠によって補完される必要がある。

全文は こちら (FOR BETTER GAMING – VEIKKAUS and the challenges of registering advertising slogans as EU trademarks)