2026-09-01

工藤莞司の注目裁判:商標的使用は必要ないとしてウェブサイト上の使用が認められた事例

(令和8年6月29日 知財高裁令和8年(行ケ)第10009号 「たべるん」不使用取消事件)

事案の概要
 被告(審判被請求人・商標権者)が有する「たべるん」を横書きして、35類を指定役務とする登録に対して、原告(審判請求人)は、商標法50条1項に基づき本件指定役務のうち「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供・・・」について、本件商標の登録の取消審判(2024-300908)の請求をし、「要証期間」は令和3年12月17日から令和6年12月16日である処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対し、審決の取消しを求めて提訴した事案である。

判 旨
 商標法50条では、商標的使用の限定がされていないことにかんがみると、同条2項本文にいう「登録商標の使用をしている」というためには、その文言のとおり、当該登録商標が、請求に係る指定商品又は指定役務について何らかの態様で使用されていれば足り、需要者において何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識し得る態様により使用されていることまで要しないと解するのが相当である。
 被告が日本国内の一般の消費者に向けて令和3年12月15日に公開した本件ウェブサイトこれは、要証期間における被告のウェブサイトと同一の内容である。)には、被告のプライベートブランド(「わたしのこだわり」) について、「新PB「わたしのこだわり」のコンセプトは、いつまでも、安心で、おいしく、楽しい食卓のために、作る人と食べる人が一緒に考え、あなたの食のこだわりに応える商品」です。」、「新しくなった/東都生協のプライベートブランド商品が、/食卓をおいしく、幸せにします!」、「… 組合員の疑問に答えるべく、「るんるんズ」が徹底調査。…プライベートブランド「わたしのこだわり」の秘密に迫ります。」などと記載されているほか、「「わたしのこだわり」調査隊。」及び「みんなの疑問に答えます!」 の赤色文字が上下2段に、その右側上段に、3人のキャラクターの図像が、中段の同図像の直下に、各キャラクターに対応して「くばるん」、「たべるん」、「つくるん」の黒色文字が、下段に、「さんぼんすぎキャラクター 「るんるんズ」」の黒色文字がそれぞれ表示され、これに続いて、Q&A形式で、プライベートブランド商品である複数の飲食料品の画像等と共に、プライベートブランドの理念、政策、考え方、プライベートブランド商品の品質、特徴、包装デザインやロゴマークの選定理由等に係る説明が記載されている(証拠略)。使用商標と本件商標は、いずれも「たべるん」の文字を横書きに表して成るもので、社会通念上同一のものと認められる。そして、前記認定事実によれば、本件商標の商標権者である被告は、本件ウェブサイトの公開により、要証期間内に日本国内において、請求役務の一つである「飲食料品の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」 について、役務に関する広告に使用商標を付して電磁的方法により提供する行為により商標法2条3項8号に該当する「使用」をしたと認めることができ、そうすると、同法50条2項本文により、請求役務について本件商標の登録を取り消すことはできないというべきである。

コメント
 本件事案においては、不使用取消審判において被告が立証したウェブサイト上の広告に掲載された本件商標に商標的使用の要否が争われて、知財高裁は、それは要しないとして、被告の使用を認めたものである。この点は時々争われるが、知財高裁は同様の解釈と思う(拙著「商標法の解説と裁判例加改訂版」352頁以下参照)。先裁判例に『なるほど、商標権の侵害の成否を論ずるときは、第三者による登録商標の使用が識別標識としての使用でなければ登録商標の本質的機能は何ら損なわれないのであるから、商標権の侵害が成立するためには第三者が登録商標を識別標識として使用したことを要するといい得る。しかしながら、商標の不使用を事由とする商標登録取消しを論ずるときには、前述のような制度の存在理由に鑑みても、商標法第50条所定の「登録商標の使用」は、商標がその指定商品について何らかの態様で使用されておれば十分であって、識別標識としての使用(すなわち、商品の彼比識別など商標の本質的機能を果たす態様の使用)に限定しなければならぬ理由は、全く考えられない。』(「ポーラ不使用取消事件」平成3年2月28日 東京高裁平成2年(行ケ)第48号 知的裁集23巻1号163頁)としている。