2026-10-21

ロシア:商標登録時における同意書の要件 - Gorodissky

ロシアでは、商標登録の障害となる他人の先行商標との抵触を解消するため、一定の条件の下で先行商標権者の同意書を提出することが認められている。また、商標に公的な標章・名称等を含める場合や、文化遺産・文化財に関係する標章を登録する場合には、法令に基づき、所管機関または所有者等の同意が必要となることがある。さらに、宗教的なシンボルや用語を含む標章については、公共の利益との関係から登録の可否が審査され、所定の手続に基づくロシア宗教間評議会の意見が求められる場合がある。これらは根拠となる法規定や同意の法的効果が異なるため、同意書の提出によって登録が可能になるかどうかは、それぞれの事情に応じて判断する必要がある。

1.先行商標と類似する商標の登録
ロシア連邦民法典第1483条第6項第1号および第2号により、類似の商品・役務について、先行する出願または登録商標と同一または混同を生じるほど類似する標章は、原則として登録できない。ただし、先行商標権者の同意があり、登録によって需要者が誤認しない場合には、類似商標の登録が認められる可能性がある。

もっとも、同意書の提出は拒絶理由の解消を保証するものではない。特に、先行商標が著名商標または団体商標である場合、同意書によって障害を解消することはできず、商標が同一の場合も同意書による登録は認められない。なお、同意を拒否された出願人が、先行商標の不使用取消しを請求する可能性もある。

同意書には、①同意する権利者および同意を受ける出願人の名称・住所、②対象となる出願商標および先行商標の特定(出願番号がある場合はその番号を含む)、③同意の対象となる商品・役務の具体的な一覧、④作成日、⑤権限を有する者の署名を記載する。標章は単なる文章による説明ではなく、実際の標章を表示する必要があり、色彩付きで出願・登録されている場合は、そのとおりに再現する。書式は自由だが、同意は撤回できない。原本の提出が必要であり、代理人が署名する場合は権限を証明する書類を添付する。ロシア語以外で作成した場合はロシア語訳も必要となる。関連会社間の同意では、両社の関係を明記または別途証明することが望ましい。

知的財産裁判所は、同意書に商品・役務の具体的な一覧や権利者の住所がないこと、署名者の権限を証明できないことなどを理由に、同意書に基づく登録を認めたロスパテントの決定を覆した事例がある。同意書は審査段階だけでなく、審判・不服申立てや司法審査の段階でも提出できる。

2.公式の標章・名称等を含む商標
国旗、国章、勲章、通貨、国際機関・政府間機関の名称や標章、公式の印章、認証・保証を示す標章など、その全部または識別可能な一部を複製・模倣する標章は、原則として登録できない。ただし、所管する国の機関または国際機関等の権限ある機関の同意があれば、保護を受けない要素として商標に含められる場合がある。ロシアの国章等については、大統領直属紋章評議会が所管機関とされる。

3.文化遺産・文化財に関する標章
ロシア国民の特に価値の高い文化遺産、世界文化遺産・自然遺産の正式名称・画像、またはコレクション等に収蔵された文化財の画像と同一・類似する標章について、所有者以外の者が登録を求める場合、原則として所有者またはその権限を受けた者の同意が必要となる。国有財産については、当該遺産を管理・代表する権限を付与された機関、自然保護区、国立公園、博物館等が同意主体となり得る。同意は契約に基づいて行われる。

4.宗教的な標章
宗教用語や宗教的シンボルを含む商標は、公共の利益に反すると判断され、登録が拒絶されることがある。宗教団体から同意書を得ただけでは十分とは限らず、対象標章や商品・役務の特定が不十分である場合や、当該団体の同意だけでは公共の利益に反しないことを示せない場合には、登録が認められない。2024年の制度改正後は、宗教的シンボルを含む標章について、ロスパテントが所定の手続に従ってロシア宗教間評議会の意見を求める仕組みが導入されている。

実務上の留意点: 同意書の取得に際しては、同意主体の権限、対象標章および商品・役務の特定、署名の真正性、公共の利益への適合性を十分に確認する必要がある。先行商標との抵触以外にも同意が必要となる場合があり、同意書の提出だけで登録が保証されるわけではない。

全文は こちら (Navigating Russia’s Rules on Trademark Letters of Consent)