2026-10-20

工藤莞司の注目裁判:無効審判不成立審決が維持された事例(「ナノディフェンダー」事件)

(令和8年8月5日 知財高裁令和8年(行ケ)第10004号 「ナノディフェンダー」事件)

事案の概要
 被告(被請求人・商標権者)が有する登録商標「ナノディフェンダー」(登録第6466038号)5類「銀イオンを含む抗菌剤(工業用及び洗濯用のものを除く。)、銀イオンを含む殺菌剤、銀イオンを含む消臭剤(工業用・身体用・口臭用及び動物用のものを除く。)、銀イオンを含む防臭剤(工業用・身体用・口臭用及び動物 用のものを除く。)」を指定商品とする本件登録について、原告(審判請求人)は、特許庁に対し、商標法4条1項7号、15号及び16号に該当すると主張して、登録無効審判(2024-890067)を請求した処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対して、審決の取消しを求めて提訴した事案である。

判 旨
 (15号該当性に関する判断遺脱・審理不尽): 15号の規定は、周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーラ イド)及び当該表示の希釈化(いわゆるダイリューション)を防止し、商標の自他識別機能を保護することによって、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護することを目的とするものである。しかるところ、前記認定事実によれば、原告には、令和2年10月頃から同年12月頃にかけて、一定の範囲で「ナノソリューションAg+」のコーティング の施工実績は認められるが、その他に、原告表示の使用態様及び使用地域、「ナノディフェンダー」等を使用したコーティング剤又はそれを使用した施工実績、原告表示の広告宣伝の方法、期間、地域及び規模等が明らかではないから、本件出願日において、原告表示が15号によって保護されるべき周知著名性を有していたと認めるに足りる証拠はないというほかない。そうすると、本件商標をその指定商品に使用したときに、その取引者又は需要者において、その商品が原告の業務に係る商品と広義の混同を生ずるおそれがあるということはできない。
 (16号該当性に関する判断遺脱・審理不尽): 原告は、本件商標の指定商品として「医薬品(5類)」との登録外形を掲げることにより、需要者に医薬品同等の品質・効能を連想させ得るものであるなどと主張する。しかし、商標法6条2項、同法施行令2条及び別表並びに同法施行規則6条及び別表によれば、商品及び役務の区分を定めた上記各別表において5類は「薬剤」と定められており、「医薬品」以外を含むから、原告の主張はその前提を欠くものである。そして、本件商標の指定商品は、別紙商標目録記載2の指定商品のとおり、抗菌剤等とされており、需要者に医薬品同等の品質・効能を連想させ得るものということはできない。
 (7号該当性に関する判断回避): 前記認定の「ナノディフェンダー」及びこれを含む標章の使用状況によれば、被告が本件商標に化体された原告の信用にフリーライドしたとは認められない。また、本件商標が商品の品質の誤認を生じさせるものでないことは前記判示のとおりである。したがって、本件商標が取引秩序破壊として社会的害悪性が強いということはできないから、これと同旨の本件審決に判断回避の違法があるとは認められない。

コメント
 無効審判不成立審決の取消訴訟でも請求が棄却された事例である。原告と被告とは、直前まで被告との間で取引関係にあったようだが、終了後の無効審判請求である。無効事由は帯に短かし、襷に・・・の感があり、その理由も的を得ていない。前々掲「ナノソリューションAg+」事件(令和8年8月5日 知財高裁令和8年(行ケ)第10003号)と同一当事者間の争いで、残念な事件である。