(令和8年2月16日 東京地裁令和6年(ワ)第70219号 ハンドバック形態模倣事件(控訴棄却令和8年8月18日 知財高裁令和8年(ネ)第10029号)
事案の概要
本件は、原告が、被告によるハンドバッグ(被告商品)の製造及び販売等は、原告が製造及び販売等するハンドバッグ(原告商品)の形態を模倣した商品を譲渡等する不正競争(不正競争防止法2条1項3号)であり、原告はこれにより営業上の利益を侵害され、損害を被ったと主張して、被告に対し不競法4条に基づき損害賠償及び遅延損害金の支払を求めた事案である。争点は、原被告商品形態の実質的同一性の有無である。
判旨要旨
形態の実質的同一性の有無(被告商品のハンドルの捻りの有無)・・・各部位の寸法も、相互に近似しているといってよい程度の差異にとどまる。相違点①、④ 及び⑥については、その相違の程度及び位置等のゆえに、それ自体としては、いずれも取引者及び需要者にとって外観上顕著な相違と認識されるとは必ずしもいえない程度の些細な相違とみられる。相違点⑤それ自体としては、両商品の実質的同一性を否定するに足りる程度のものとまではみられない。・・・相違点②は原告商品と被告商品の実質的同一性を否定するに足りない些細なものとみるのが相当である。しかし、相違点③すなわち背面の外部ポケットの有無についてみると、原告商品には外部ポケットが存在しないのに対し、被告商品には、背面視において、商品の中心部分にかなり大きな領域を占める形で外部ポケットが存在しており、取引者及び需要者にとって、視覚的に容易に認識し得るというにとどまらず強く印象に残るというべき相違点である。このため、相違点③は、商品全体の形態に与える効果という点ではおよそ無視し得るものではない。仮に、スマートフォンその他小物類を容易に収納及び取出し可能なポケットをバッグに取り付けることは容易に着想し得るとしても、その具体的な寸法、配置及び形状等は商品のデザインに大きな影響を及ぼしかねない要素であり、この点で、被告商品のようなデザインを着想し採用することは、必ずしも容易ではないというべきである。被告が「ルーポケット」とするポケットの配置や形状等は商品によって様々であるが(証拠略)、被告商品の紹介画像にも正面のみならず背面をも掲載しているものがみられ(証拠略)、「ルーポケット」は被告において取引者及び需要者に対する訴求ポイントと位置付けられていることがうかがわれることに鑑みると、被告商品が相違点③に係るデザインを採用するに至った動機、背景は、上記コンセプトの一環として理解される。こうした動機等も、被告商品の相違点③に係る構成に至る着想の難易度を考える上で は考慮に入れられるべきである。これらの点に鑑みると、バッグ背面部は、正面部との比較において取引者及び需要者に着目される程度は相対的に低いとしても、なお取引者及び需要者 の注意を惹くものとみるのが相当である。以上の事情を総合的に考慮すると、原告商品と被告商品とは、前記認定に係る共通点が存在し、また、相違点①、②、④~⑥がそれ自体では 両商品の実質的同一性を否定するに足りない程度の相違にとどまるとしても、少なくとも相違点③は些細な相違とはいえないから、その形態において実質的に同一のものとはいえない。
コメント
商品の形態模倣行為において商品ハンドバックの形態について、実質的同一性が争われて、否定されたものである。原被告商品の形態中、被告商品のハンドルの捻りの有無や①本体の正面及び背面から見た際の全体的な形状 ②正面に位置するタグの有無 ④内ポケットの位置及び形状 ⑤ハンドル付け根部分の口回りの段差の程度 ⑥ハンドル付け根部分の縫製の仕様の共通性については肯定されたが、相違点③の背面部のポケットの有無が実質的同一性否定のポイントとなった。控訴審でも維持された(令和8年8月18日 知財高裁令和8年(ネ)第10029号)。判決に図面の登載がなく分かり難い。最近不正競争防止法裁判例が少ない中、久しぶりの商品形態模倣行為事件である。
