2026-10-13

工藤莞司の注目裁判:権利濫用として棄却された原審判決が維持された事例

(令和8年9月9日 知財高裁 令和8年(ネ)第10017号 「ゴミサー」商標権侵害控訴件(原審・令和8年1月16日 東京地裁令和5年(ワ)第70505号)

事案の概要
 本件は、控訴人(原告)商標権(「ゴミサー」第5769618号 7類生ゴミ処理機,液体肥料製造装置)を有する控訴人(原告・商標権者)が、被控訴人(被告)に対し、被控訴人が業務用生ごみ処理機に標章を付して販売すること等により控訴人商標権が侵害されているとして、商標法36条1項及び2項に基づき差止め及び廃棄を求めるとともに、民法709条に基づき損害賠償及び遅延損害の支払を求めた処、原審は、原告の被告に対する原告商標権に基づく権利行使は権利の濫用として許されないとして、原告の請求をいずれも棄却したため、原告は、これを不服として本件控訴を提起した事案である。原審判決については、26.3.10付け本サイト拙稿参照(こちら)。

判 旨
 「ゴミサー」という標章は、被控訴人が自身の開発した被告商品の名称として発案し、その使用を続けているものであり、控訴人は被告商品の販売代理店としてこれを使用してきたこと、控訴人は、被告旧商標権の消滅を知ると、被控訴人に無断で本件出願をし、原告商標権を取得したことといった本件の事実経過(原判決を引用)に照らすと、控訴人と被控訴人の間において は、被告旧商標権が消滅し、原告商標権の設定登録がされた後も、控訴人は被控訴人による「ゴミサー」という商品名の使用を尊重すべきものであり、被控訴人はその使用を控訴人に妨げられない正当な利益を有していると解される。したがって、被控訴人による被告標章の使用に対する原告商標権の行使を否定した原審の判断は、これを是認することができる。

コメント
 商標権の行使が権利濫用とした原審判決が、控訴審でも維持されたものである。控訴人は、被控訴人製造「ゴミサー」使用商品の販売を継続しながら、被控訴人の当該商標権の更新切れを知って本件商標権を登録して、被控訴人に対して権利行使したというのであるから、権利濫用は免れない。信義誠実の原則に反する。原審判決は被控訴人商標の信用化体についても触れている。4条1項7号違反の無効理由の存在を理由に権利濫用の抗弁(39条・特104条の3)も可能と思われるがそれ以前の事例であろう。