(令和8年8月5日 知財高裁令和8年(行ケ)第10003号 「ナノソリューションAg+」事件)
事案の概要
被告(被請求人・商標権者)が有する登録商標「ナノソリューションAg+」(登録第6415768号)5類「銀イオンを含む抗菌剤(工業用及び洗濯用のものを除く。)、銀イオンを含む殺菌剤、銀イオンを含む消臭剤(工業用・身体用・口臭用及び動物用のものを除く。)、銀イオンを含む防臭剤(工業用・身体用・口臭用及び動物 用のものを除く。)」を指定商品とする本件登録について、原告(審判請求人)は、特許庁に対し、商標法4条1項7号、15号及び16号に該当すると主張して、登録無効審判(2024-890066)を請求した処、 特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対して、審決の取消しを求めて提訴した事案である。
判 旨
(15号該当性に関する判断遺脱・審理不尽)前記認定事実によれば、原告には、令和2年10月頃から同年12月頃にかけて、一定の範囲で「ナノソリューションAg+」のコーティング の施工実績は認められるが、その他に、原告表示の使用態様及び使用地域、「ナノソリューションAg+」等を使用したコーティング剤又はそれを使用した施工実績、原告表示の広告宣伝の方法、期間、地域及び規模等が明らかではないから、本件出願日において、原告表示が15号によって保護されるべき周知著名性を有していたと認めるに足りる証拠はないというほかない。そうすると、本件商標をその指定商品に使用したときに、その取引者又は需要者において、その商品が原告の業務に係る商品と広義の混同を生ずるおそれがあるということはできない。
(16号該当性に関する判断遺脱・審理不尽)原告は、本件商標の指定商品として「医薬品(第5類)」のみを前面に出すことにより、需要者に医薬品同等の品質・効能を連想させ得るものであるなどと主張する。しかし、商標法6条2項、同法施行令2条及び別表並びに同法施行規則6条及び別表によれば、商品及び役務の区分を定めた上記各別表において第5類は「薬剤」と定められており、「医薬品」以外を含むから、原告の主張はその前提を欠くものである。そして、本件商標の指定商品は、別紙商標目録記載1の指定商品のとおり、銀イオンを含む抗菌剤等とされており、需要者に医薬品同等の品質・効能を連想させ得るものということはできない。したがって、これと同旨の本件審決に判断遺脱・審理不尽の違法があるとは認められない。
(7号該当性に関する判断回避)原告は、本件商標は、原告の信用にフリーライドして商流を奪取するものである上、医薬品的効能・品質を連想させ得るものであって、取引秩序破壊として社会的害悪性が強く、公序良俗を害するおそれがあるなどと主張する。しかし、前記認定の「ナノソリューションAg+」及びこれを含む標章の使用状況によれば、被告が本件商標に化体された原告の信用にフリーライドしたとは認められない。また、本件商標が商品の品質の誤認を生じさせるものでないことは前記判示のとおりである。したがって、本件商標が取引秩序破壊として社会的害悪性が強いということはできないから、これと同旨の本件審決に判断回避の違法があるとは認められない。
コメント
無効審判不成立審決の取消訴訟でも請求が棄却された事例である。原告と被告とは、直前まで被告商品について取引関係にあったようだが、終了後の無効審判請求である。無効事由は帯に短かし、襷に・・・の感があり、その理由も的を得ていない。残念な事件である。
