2026-10-15

EU、ベネルクス:ビールの開栓音と商標、グロールシュの場合 - Knijff Trademark Attorneys

グロールシュ(Grolsch)は、1615年にオランダで誕生した、世界最古のビールブランドの一つで、グロールシュと聞けば、その特徴的なスイングトップ(ワイヤーと陶器などでパチンと密閉できる金具付き栓)のボトルを思い浮かべるかもしれない。そして、開栓時のあの独特な「ポン(pop)」という音も同様だ。その音は長年にわたりグロールシュの広告において重要な役割を果たしてきた。2026年の最新キャンペーン「Cheers to character, sounds like Grolsch(個性に乾杯、グロールシュのような音)」でも取り上げられている。そのため、この開栓音はブランドと極めて強く結びつくようになった。

グロールシュは数十年間にわたり、この開栓音を一種の音標章として実質的に使用してきた。最近になってグロールシュは、そろそろ実際に商標として登録する時期かもしれないと考えたのだろう。しかし、オランダ国内で長年使用され認知されているにもかかわらず、この開栓音の商標登録は決して容易なことではなさそうだ。音商標であっても、自他商品識別力の要件を満たす必要がある。消費者は、その音によって商品の出所を識別できなければならない。極めてありふれたメロディでは識別性に欠けるため登録要件を満たさない。グロールシュの場合、その「ポン」という音はジングルではなく、ボトルを開ける際に発生する音だ。グロールシュは登録に難航が予想されたためか、ベネルクスにおいては、外観的要素としてグロールシュのロゴを配したマルチメディア商標として出願し、ベネルクス知的所有権庁(BOIP)において問題なく登録査定を受けた。 

グロールシュは、欧州連合知的財産庁(EUIPO)に対してより野心的なアプローチをとった。EUIPOにおいては、グロールシュのロゴやその他の外観的要素を一切伴わない、純粋な音商標として「ポン」という音を出願したのだ。グロールシュにとっては残念だったが、EUIPOはこの商標には識別力が欠如していると判断した。グロールシュが出願を取り下げたため、具体的な拒絶理由の全容を特定することはできないが、EUIPOは、平均的な消費者にとってその音は一般的なものであり、音それ自体では特定の企業の商標に係る商品を他企業の商標に係る商品から識別する機能(自他商品識別力)を有しないと判断した可能性が極めて高い。

グロールシュは、使用による識別力の獲得(セカンダリー・ミーニング)の証拠を提出することにより、当該音が使用を経て既に識別力を獲得していることを立証しようと試みることもできたが、それには多大な費用を要する作業になり得るし、特にEU商標においては、欧州連合内の関連する地域全域にわたって使用による識別力を立証しなければならないため、極めてハードルが高くなる。グロールシュはオランダでは非常に有名であるものの、ベルギーやドイツといった国々ではそれほど知られていないことを考慮すると、この立証は困難と思われる。

このように、EUレベルでの成功は収められなかったものの、ベネルクスにおいては少なくともグロールシュには依拠できる権利が存在する。そして、1点注目すべき事項がある。それは、EU出願においてベネルクス商標からの優先権主張をして、それが認められたという点だ。保護期間の開始を原出願の出願日にまで遡及させるために優先権を主張することは、もちろん一般的だが、本件において、ベネルクス登録商標とEU出願商標とでは商標のタイプが異なっているのだ。

EUIPOは、登録手続の不要な遅延を避けるため、優先権主張の実体審査を行わない。しかし、商標登録簿こそ、第三者が商標に関する正確な情報を信頼できる場であるべきだ。したがって、このような審査(確認)の欠如は不備であると考える。利害関係人は、この側面(優先権の正当性)が検証されていないという事実を認識しておく必要があるだろう。

本文は こちら (Sounds like Grolsch)