2026-06-30

工藤莞司の注目裁判:出願商標については構成全体で類否判断をすべきとして、審決を取り消した事例

(令和8年4月15日 知財高裁令和7年(行ケ)第10098号 「肌構造サイエンス」事件)

事案の概要
 原告(審判請求人・出願人)は、本願商標(右掲図参照)、 指定商品3類「化粧品、せっけん類」について登録出願をしたが拒絶査定を受けて、拒絶査定不服審判(2025-5701)の請求をした処、特許庁は不成立の審決をしたため、知財高裁に対し、審決の取消しを求めて提訴した事案である。拒絶理由は、商標法4条1項11号で、引用は商標「肌構造サイエンス」(登録第6777953号)、指定商品3類「化粧品、せっけんに類」である。

判 旨
 本願商標と引用商標の類否を検討すると、本願商標は、上段に、外側から中央に向けて灰色から白色にグラデーションが施された円図形内に「乳酸菌」と「サイエンス」の文字を上下二段に同じ幅で表し、中段に「×」の記号を配し、下段に、グラデーションが施された灰色の線で描かれた年輪様の円図形内に「肌構造」と「サイエンス」の文字を上下二段に同じ幅で表して成るものであるのに対し、引用商標は、「肌構造サイエンス」の文字を標準文字で横書きして成るものであるから、本願商標と引用商標が、外観において相違することは明らかである。また、本願商標の構成部分全体からは「ニュウサンキンサイエンスカケルハダコウゾウサイエンス」との称呼が生じ、「乳酸菌に関する科学的知見と、肌の構造に関する科学的知見とを、掛け合わせたもの(商品)」ほどの観念 が生ずるのに対し、引用商標からは「ハダコウゾウサイエンス」との称呼が生じ、「肌の構造についての科学的知見(を利用した商品)」ほどの観念が生ずるのであって、本願商標と引用商標は、称呼においても観念においても類似するとはいえない。そうすると、本願商標及び引用商標が、その外観、観念、称呼等によって 取引者や需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察しても、両商標が同一の商品に使用された場合に、その商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるとは認められず、本願商標と引用商標は、非類似の商標というべきである。
 本願商標の外観上の特徴に加え、その構成部分全体から生ずる称呼がやや冗長であることや、商取引においては、コラボ商品等を中心として、複数の独立したブランド名又は名称を併記する際、その間に「×」の 記号を配置する表示が広く採択、採用されていることを併せ考慮しても、本件において、本願商標の下段部分の文字部分のみを引用商標と比較して商標の類否を判断することは許されず、その構成部分全体を引用商標と比較して商標の類否を判断すべきである。被告の主張は、前提を異にするもので、採用することができない。

コメント
 知財高裁は、本願商標については、文字、図形は一体不可分のものとして、引用商標とは非類似と判断して、審決を取り消したものである。何故全体観察すべきかについては、言及していない。すなわち、審決の分離観察を否定したのであるから、本願商標が一体不可分性である理由を積極的に示すべきと思う。引用商標と同一文字を有する他人の商標が併存登録されることになる。造語ではないから已む得をないのであろうか。