(令和8年6月18日 知財高裁令和7年(行ケ)第10121号 「五輪」不使用取消事件)
事案の概要
被告(審判被請求人・商標権者)が有する登録商標「五輪」(標準文字 登録番号第6118624号)41類スポーツの興行の企画・運営又は開催、スポーツの興行の企画・運営又は開催に関する情報の提供、スポーツ競技結果の情報提供その他第41類等に属するものに係る登録に対して、原告(審判請求人)らは、41類全指定役務について、商標法50条1項に基づき不使用取消し審判(2024-300058)を請求し、要証期間は令和3年3月1日から令和6年2月29日までの期間であった処、特許庁は不成立審決をしたため、原告らは、知財高裁に対して、審決の取消しを求めて、本件訴えを提起した事案である。
判 旨
本件記事1は、テニスのロジャー・フェデラー選手の過去の五輪の結果を伝える内容の2021年(令和3年)4月5日の記事であるところ、本件商標「五輪」が、オリンピックのシンボルいわゆる五輪マ ーク(証拠略)とともに使用されている。また、本件記事2は、東京五輪(東京オリンピック)の女子テニスの結果を伝える内容の 同年8月5日の記事であり、本件商標「五輪」が、オリンピックのシンボルいわゆる五輪マーク(証拠略)とともに使用されている。本件各記事は、いずれも、東京オリンピックの競技種目の一つであるテニスの運営又は開催に関する情報や、その結果を伝える内容の記事であることから、本件指定役務のうち、「スポーツの興行の企画・運営又は開催に関する情報の提供」、「スポーツ競技結果の情報提供」、「スポーツの結果に関する情報の提供」、及び「スポーツの興行及びスポーツイベントの企画・運営又は開催に関する情報の提供」を目的とする記事ということができる。そうすると、これら記事を掲載したウェブページを公開する行為は、「スポーツの興行の企画・運営又は開催に関する情報の提供」、「スポーツ競技結果の情報提供」、「スポーツの結果に関する情報の提供」及び「スポーツの興行及びスポーツイベントの企画・運営又は開催に関する情報の提供」に該当する。被告のデジタル・エンゲージメント&マーケティング部の部長であるAの陳述書(証拠略)によれば、本件各記事が掲載されたウェブサイト(https://olympics.com/ja/)は被告のウェブサイトであり、Aが同ウェブサイトに関する活動を監督しており、本件各記事はそこに掲載されたものであること、被告のウェブサイトはオリンピックチャンネルサービス社(オリンピックチャンネル社)に管理・運営を委託しており、オリンピックチャンネル社はこれに基づき本件各記事を作成したものであって、本件各記事には「執筆者オリンピックチャンネル編集部」(証拠略)又は個人名(証拠略)が記載されているが、これら執筆者には被告が記事の作成を委託したものであり、本件各記事は、被告が自らそのウェブページで公開したものであることが認められる。そうすると、本件各記事を掲載したウェブページを公開しているのは被告であり、その行為はネットワークを通じた役務の提供を対象とするものであり、モニター、ディスプレー等の「映像面」に標章を表示して役務を提供する行為であるから、商標法2条3項7号にいう「電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他人の知覚によっては認識することができない方法をいう。)により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為」に当たる。
コメント
本件事案は、不使用取消審判の不成立審決が知財高裁で争われて、被告の使用の立証が認められて、取消訴訟が棄却された事例である。被告は、本件商標「五輪」が記載されたオリンピックの新聞記事を被告ウェブサイトに公開した行為について立証し、これが本件商標の使用と認められたものである。被告は、コミテ アンテルナショナル オリンピック(国際オリンピック委員会。「IOC」)である。
