2026-11-02

工藤莞司の注目裁判:行政書士に係る役務について商標「相続ワンストップ」は法3条1項3号に該当とされた事例

(令和8年9月16日 知財高裁令和8年(行ケ)第10020号 「相続ワンストップ」事件)

事案の概要
 原告(審判請求人・出願人)は、商標「相続ワンストップ」の文字を普通に用いられる方法で横書きに表してなり、指定役務を45類「行政書士法第1条の2にいう官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類の作成」(補正後のもの)とする本願商標について、登録出願をしたが拒絶査定を受けて、拒絶査定不服審判(2024-9103)を請求した処、特許庁は不成立審決したため、知財高裁に対し、審決の取消しを求めて提訴した事案である。拒絶理由は、商標法3条1項3号及び4条1項16号である。

判 旨
 本願商標の構成中、「相続」の文字部分からは、「死亡した人(被相続人)の財産に属した一切の権利義務を一定の親族(相続人)が包括的に承継すること。」との観念が生じ、「ワンストップ」の文字部分からは、「一か所。また、複数のことを一か所ですませられること。」、又は「複数の買い物や用件が一か所で済ませられること。」との観念が生ずることは、前記⑵アのとおりであり、遅くとも本件審決時において、行政書士を含む様々な士業や、これらの士業と連携した事業者により、「相続ワンストップサービス」、「相続ワンストップ体制」、「相続ワンストップ対応」、「相続ワンストップ窓口」、「相続ワンストップ相談」、「ワンストップ相続」などと称して、書類の作成を含む様々な相続関連業務を一か所で請け負い、サポートする役務が提供されていたことは、前記⑵イのとおりであって、かかる本願商標中の構成文字の語義及び本願指定役務に係る取引の実情に照らすと、本願商標「相続ワンストップ」は、本件審決時において、これが本願指定役務に使用された場合に、本願指定役務の需要者(一般の消費者)によって、「様々な相続関連業務を一か所で行うことができる」程度の意味合いで、役務の質を表示記述するものとして一般に認識されるものであったと認められる。そうすると、本願商標は、本願指定役務との関係において、役務の質を普通に用いられる方法で表示記述する標章のみからなるものであって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、自他役務の識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものというべきである。前記によれば、本願商標「相続ワンストップ」を本願指定役務に使用すると、これに接する需要者は、「様々な相続関連業務を一か所で行うことができる」との役務の質を表示記述したものと認識することになるから、これを上記以外の役務に使用すると、役務の質の誤認を生ずるおそれがあるといえる。したがって、本願商標は商標法4条1項16号にも該当すると認められる。

コメント
 本願商標「相続ワンストップ」は、指定役務「行政書士法第1条の2にいう官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類の作成」については、役務の質表示で3条1項3号に該当するとして、拒絶審決が踏襲されたもので、合わせて4条1項16号該当ともされた。行政書士を含む様々な士業により、「相続ワンストップサービス」はじめ、「ワンストップ・・・」等の使用例が30以上も被告提出の乙号証をもって立証されている。ネット検索等による事前調査も重要である。